裏側矯正(舌側矯正)は装置が目立ちにくいため、見た目を重視しながら歯並びを整えたい方に適した矯正方法です。当院にご相談にいらっしゃる患者様からも「裏側矯正を考えていますが、装置を内側につけると喋りにくくなりますか?」とご質問をいただくことがあります。結論からお伝えすると、最初は喋りにくさを感じますが、通常は時間と共に慣れていきますので心配ありません。今回は、裏側矯正の喋りにくさや、その対策などについて解説していきます。
目次
喋りにくさは“多くの方が一時的”

裏側矯正は、歯の裏側の舌がある側に装置をつけるため、舌の動きが制限されます。そのため舌が動かしにくく、特に装置をつけた直後は一定期間大きな違和感を感じることでしょう。個人差はありますが、多くの方は「数日〜数週間」程度で慣れ、滑舌への影響や喋りにくさは徐々に改善されていきます。もしお仕事や学校のイベントなどがあり、喋りにくくなると困るという場合には、遠慮なくご相談ください。装着時期や練習の計画を立てることなどで、対策をすることが可能だからです。
なぜ喋りにくく感じるのか

裏側矯正で、喋りにくさを感じる主な理由は、以下の3つです。
舌の可動域と装置の位置
裏側矯正を行う際は、舌側にブラケットなどの装置をつけていきます。矯正する前にはなかった場所に装置がつくため、舌の可動域が狭くなり、舌が装置に当たりやすい環境になってしまうからです。
発音との関係
舌先や舌の位置が重要となる『サ行』や『ラ行』は、特に発音しにくくなります。また、英語の『th』や『r』も同様です。こちらは、発音時に舌を歯の裏側につけるなどの動きが必要となるからです。装置によって、今までと同じ舌の動きがしにくくなってしまいます。
口内炎や乾燥
お口の中に痛みや違和感を感じている場合も、発音が乱れやすくなります。例えば、装置が原因で口内炎ができてしまったり、口内が乾燥しやすくなっている場合などです。口内が乾燥していると、舌をスムーズに動かすことができません。しかし装置への異物反応により生じている場合は、一時的なものでしょう。
慣れるまでの目安と経過
この項では、裏側矯正を始めてから装置に慣れるまでの目安と経過についてご紹介していきます。個人差があるため、あくまでも目安の1つですが、どうぞ参考にしてください。
・初日〜3日
装置をつけた当日〜3日間は、特に違和感を強く感じます。喋りにくさに驚いてしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、ご自身で思うよりは相手に伝わっている、というケースも少なくありません。コツとしては、ゆっくり話すことを意識していただくと伝わりやすいでしょう。
・1週間前後
段々と舌の動かし方が掴めてくる頃です。装置をつけて狭くなったスペースに舌が順応し、喋りにくさは少し軽減されたように感じます。それに伴い、言いづらい音も限定的になります。
・2〜4週間
2週間以上経過すると、ほとんどの方は大分慣れてきます。日常会話程度であれば、特に問題はないでしょう。ただし、電話を通しての会話では聞き取りづらい可能性があります。ゆっくり、そしてハッキリと発音するように心がけましょう。
※イベント前の計画例
当院では、お仕事での会議やプレゼンなどを控えている場合は「装着→練習→本番」といった流れで本番を迎えられるように計画して治療を進めていきます。
今日からできる発音対策10選

発音対策として、次のようなものがあげられます。ぜひ試してみてください。
①音読をする
1日10分ほど、新聞や台本などを音読します。その様子を録音し、セルフチェックすると効果的です。
②サ行・ラ行の重点練習
発音しにくいこれらの音は、最初はゆっくり話すように意識してください。慣れてきたら等速へと移行すると良いでしょう。
③早口言葉は慣れてから
ゆっくりハッキリと話すことから始め、段階的にスピードを上げていきましょう。無理は禁物です。
④口内の保湿を意識する
口内が乾燥していると、舌が動かしづらくなり発音に影響することがあります。こまめな水分補給を心がけましょう。
⑤矯正用ワックスを活用する
装置が当たる場合は、その部分を矯正用ワックスで保護しましょう。
⑥口内炎対策
市販保護剤を活用することにより、緩和できる可能性があります。
ただし、つらい時や繰り返す時には、我慢せずに受診してください。装置の調整により改善できるケースもあるからです。
⑦深呼吸や要点メモをする
特に最初の1週間は、会議や電話などで話す前に要点をまとめておきましょう。そうすることで、話し方に意識を集中させることができます。
⑧口角を意識する
接客・プレゼンなどは、いつもよりも口角を意識してハッキリ発声するようにしてください。
⑨歌・吹奏楽・英会話など
発音練習のため、通常の1.5倍の練習時間を確保しておくことをお勧めします。
⑩医院に相談する
合わない・当たりが強いと感じたら、早めに医院に相談しましょう。微調整により改善できる可能性があります。
装置タイプで異なる“感じ方”

裏側矯正には、『フルリンガル』と『ハーフリンガル』という方法があります。フルリンガルは上下とも歯の裏側に装置つける方法で、ハーフリンガルは見た目が気になる上の歯のみ裏側につける方法です。どちらを選択するかによって、口内のスペースや舌の可動域に差が生じます。そのため、発音や滑舌にも違いが出る可能性があるでしょう。
また、ブラケットの厚みや舌側のスペースが大きいのか小さいのかといった差でも、体感に違いが生じます。とはいえ、多くは歯科医院での調整や口内環境ケアなどにより改善することができますので、心配しなくても大丈夫です。矯正方法を選ぶ際には、見た目だけではなく、このような面も含めて検討すると良いでしょう。
他の矯正法との比較
歯列矯正には、他に『表側矯正(ワイヤー矯正)・マウスピース型矯正』といった種類があります。発音への影響は、以下の通りです。
・表側矯正(ワイヤー矯正)

表側に装置をつけるため、発音への影響は比較的少ない傾向にあります。しかし装置が目立つため、審美面への配慮が必要となります。
・マウスピース型矯正

マウスピースの厚みは薄いですが、装着初期は違和感があります。歯全体を覆うため、慣れるまでは多少の喋りにくさを感じるでしょう。取り外し式のため、ここぞという時は外すなど発音調整がしやすいというメリットがありますが、1日20時間以上の装着が必要となります。
梅田キュア矯正歯科では、患者様一人ひとりの生活スタイルやご希望に応じて、最適な矯正方法をご提案しております。発音へのご不安がある方は、気軽にご相談ください。
よくある不安とQ&A
ここでは、患者様から良くいただくご質問とその答えをご紹介いたします。
Q1:電話対応や接客の仕事をしていますが、裏側矯正をしても問題ないでしょうか?
→装置に慣れるまでには、時間が必要です。あらかじめ対策をしたり、装着時期を計画することで影響を少なくしながら治療を進めることができます。
Q2:授業発表や面接の予定があります。支障はないでしょうか?
→ご予定に合わせて練習計画を立て、微調整をすることで対応が可能です。
Q3:英語の発音ができるか心配です。
→発音に特に影響がある「th/r」などは、個別の練習メニューを行うことで対策ができますのでご安心ください。
Q4:喋りにくさは、どれくらいで慣れますか?
→個人差がありますが、数週間程度で慣れてくる方がほとんどです。
Q5:ずっと喋りにくい状態が続いているのですが?
→通常は徐々に慣れていくものですが、違和感が続く場合は早めに医院へご相談ください。装置が当たっていたり、口内炎が原因となっている可能性もあります。その場合は歯科医師による調整が必要です。
当院のサポート体制
当院は、できるだけ発音へのご不安を取り除いた上で歯列矯正をしていただきたいと考えております。そのため、初回カウンセリングでは患者様の生活スタイル(仕事・学校)を丁寧にヒアリングし、より適した方法をご提案いたします。また発音対策として、発音練習シートやワックスの使い方指導などのサポート、装置の当たりがある場合には微調整するといった対応が可能です。ご不安のある時には、LINEや電話でどうぞ気軽にご相談ください。
まとめ
今回は、裏側矯正の喋りにくさや対策などについてご説明しました。
矯正装置をつけると、最初は喋りにくいものですが、多くの場合は徐々に慣れるものなので心配はいりません。また適切な対策をすることで、慣れるまでの期間を短縮することも可能です。ご不安のある方は、矯正カウンセリングなどを活用されると良いですよ。
梅田キュア矯正歯科では、裏側矯正をはじめとする矯正治療のカウンセリングを随時承っております。患者様の生活スタイルに合わせた治療計画をご提案させていただきますので、どうぞ気軽にご相談ください。

