矯正治療中に感じる違和感や痛みは個人差があります。もし、違和感や痛みが出た場合も、一時的に感じることが多いため、徐々に落ち着いてくることが多いでしょう。また、痛みが出やすいタイミングや原因があり、その対処法もあります。あらかじめ、原因と対処法を知っていると、その期間のストレスを軽減しやすくなります。そこで今回は、歯の矯正中に感じる痛みの原因と対処法についてご紹介します。
矯正治療の流れ
STEP1 カウンセリング
カウンセリングでは、今の状況や改善したいことなどを詳しくお伺いします。また、歯並びの希望や治療の種類などの概要をご説明します。矯正治療を受けられる方は、初めての方が多いため、気になることや不安なことはお気軽にご相談ください。
STEP2 精密検査
口や顔の写真、レントゲン撮影、口の型取り、など精密検査を行います。
STEP3 治療計画の立案・説明
精密検査の情報を元に歯並びをどの様に動かすかシミュレーションをします。治療計画が立案されると、治療期間の目安や費用の目安なども知ることができます。
STEP4 矯正治療スタート
治療計画に納得して頂いたら、矯正治療のスタートです。
STEP5 調整や経過観察で定期的に通院
ワイヤー矯正の場合、3週間に1回程度の通院が必要です。マウスピース型矯正も3週間程度に1回通院が必要な場合もありますが、お口の状況に応じて通院頻度が決まることがあります。定期的な通院では、新しい矯正力を加えますが、歯並びが治療計画通りに動いているかも確認します。
STEP6 歯並びを整える期間が完了
審美的な歯並びとかみ合わせのバランスが整ったら、歯を動かす動的矯正期間の終了です。ただし、まだこの歯並びで安定しておらず、装置を外してそのままになると後戻りをする可能性があります。
STEP7 保定期間
歯並びが安定するためには、保定装置をつける保定期間が大切です。保定装置は取り外し式のことが多く、決められた時間きちんと装着する必要があります。
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矯正で歯が動く仕組み
歯は、歯を支えている歯周組織によって安定しています。その中で、歯と歯ぐきの間にある「歯根膜」が衝撃をやわらげるクッションの役割をしています。そして、矯正治療の中でこの歯根膜が大切な働きをします。矯正によって矯正力をかけると歯根膜は、歯が動く方は縮んで、反対側は伸びようとします。伸びた方の歯根膜は元の厚みに戻ろうとして、骨を作る細胞ができます。反対に、縮んだ方の歯根膜は、顎の骨を溶かそうとする細胞が作られます。これらの働きが繰り返されて、少しずつ歯が動いていきます。そのため、歯が動く距離は1ヶ月に0.5~1mm程度の間で、歯や顎に負担がかからないように適切な矯正力をかけて、歯を動かします。
矯正治療で痛みが出やすい3つのタイミング
1 矯正装置が粘膜に当たっている時
歯並びの凸凹が強い部分に起きやすいのですが、矯正装置が粘膜に当たる場合があります。矯正治療が進んで、歯列に沿って歯並びが整うと粘膜には当たりにくくなりますが、一時的に装置が当たることがあります。また、矯正装置で少しずつ歯が動くと、奥歯のワイヤー部分が当たってしまい、痛みが出ることも考えられます。
【対処法】
歯の表面についているブラケットが原因で、粘膜に当たっている場合は、矯正用ワックスを使って粘膜に装置が当たらないようにしましょう。矯正用ワックスは手で簡単に切ることができ、ブラケット装置につけて覆うことができます。ワイヤーの先端が出ている場合は、粘膜を傷つけやすいため、早めに来院して対処することが望ましいですが、来院するまでの間はワックスで先端を保護して粘膜を傷つけないようにしましょう。
2 歯が動いている時
矯正装置をつけた時や調整した時、新しいマウスピースに交換した時は新たな矯正力が加わっています。矯正で加える力は、歯に負担がかからないように適切な力を持続的に加えます。ただし、矯正力をかけることで、歯を支えている組織が敏感になって、違和感や痛みが生じる場合があります。歯並びの症状や患者様の感じ方によって個人差がありますが、2~3日をピークに徐々に落ち着いてくることが多いでしょう。多くの場合は、1週間以内に落ち着いてくることがほとんどですが、持続的に痛みが続く場合は一度ご相談ください。
【対処法】
痛みを生じている場合は、炎症が起きている可能性が高く、頬を冷やすと痛みが緩和しやすくなります。この時、患部を直接冷やそうとすると、刺激が強い場合がありますので、必ず頬から冷やしましょう。歯が動いている時の痛みは一時的に生じていることが多く、徐々に落ち着いてきますが、痛みが強い場合は、「鎮痛剤」を服用しましょう。ただし、鎮痛剤を服用し過ぎると、鎮痛剤が効きにくくなる場合があります。鎮痛剤が必要な期間が長い場合には、一度クリニックに相談してみましょう。
3 矯正装置の調整やマウスピース交換後に食事した時
食事をする時は、歯を支えている歯周組織に力が加わります。普段の食事では問題がなくても、歯に新しい矯正力がかかったことで、この組織が敏感になっている場合があります。特に、固い物を噛むと負担になりやすいため、新しい力が加わって痛みが生じている場合には、やわらかい物を食べると負担を軽減しやすくなります。
【対処法】
お粥や麺類など、歯周組織に負担がかかりにくい食べ物を選ぶと良いでしょう。もし痛みが出た場合でも一時的なことが多く、落ち着いてきますので、症状を見ながら食事を調整すると痛みを軽減しやすくなります。
痛みが出た時にできること
・食べやすいサイズにする
同じ食品でも小さく切ると、噛む負担が軽減しやすくなります。また、煮るとやわらかくなるため、食事がしやすくなるでしょう。矯正で調整した日などは、歯周組織が敏感になっているタイミングです。負担のかかりにくい食べやすいサイズにすると、その期間の負担が少なくなります。
・口内炎を予防する食品を積極的に摂取する
免疫力の低下や栄養のバランスが崩れると口内炎ができやすくなります。お口の中に口内炎ができにくくするためには、ビタミンを多く含む食品を積極的に食べましょう。ビタミンB2₂やB₆は、口内炎の予防や回復を早める効果が見込めますので、おすすめです。
・お口の中を清潔にする
痛みが出た時だけではないですが、炎症が起きている時に細菌が多い状態だと、細菌感染が起きてしまう可能性があります。矯正中は、装置に汚れが残らないようにしっかり磨いたり、タフトブラシで細かい部分を磨いたりするなど工夫が必要です。汚れがそのままになってしまうと、むし歯や歯周病のリスクが高くなり、治療が必要な場合、矯正治療を中断して治療をしなければいけないことがあります。そうすると、治療計画通りに治療が進まず、治療期間が延びてしまいます。
お口の中を清潔にすることは、お口の健康維持にもつながるため、セルフケアをしっかり行いましょう。
【まとめ】
矯正治療の中で違和感や痛みがある場合もありますが、その原因によって対処法もあります。気になることはご相談いただくと対処法をお伝えできますので、お気軽にお問合せください。また、当院では、裏側矯正やマウスピース型矯正など数多くの矯正治療を行っておりますので、患者様のお口の状況とご希望に合わせて治療計画をご提案いたします。歯並びやかみ合わせが気になる方はお気軽にご相談ください。