矯正歯科に受診する患者さんの多くは歯並びに関することがほとんどであり、症例もさまざまです。歯が重なって生えている叢生や前歯が噛み合わない開口、今回のテーマでもある反対咬合も受診理由のひとつです。反対咬合とは受け口のことであり、下の前歯が上の前歯よりも前に出た状態で咬んでしまうことをいいます。下顎を前にずらし、反対咬合の状態を実際につくってみてください。下唇が前に突出し、しばらく続けていると耳前あたりの関節に疲れを感じる方が多いと思います。受け口だけに限らず、異常のある咬合状態はどこかに負担をかけ続けながら生活を送るといっても大袈裟ではありません。そこも含め、今回は受け口の原因や疑問を解決していけたらと思います。
①顎はどうやって成長するの?
はじめに、顎は何歳くらいに成長のピークを迎えるかご存じでしょうか?身長や体重と違って定期的な測定をしたり、顎が大きくなったね!などと成長を喜ぶことは少ないと思います。身長の成長はピークに達するのが男子で13歳、女子で11歳となっています。これに対し、上顎は6〜8歳がピークとなり小学校高学年くらいには80%程度が完成します。
また、下顎は上顎を追いかけるように成長するため男子は18歳、女子は15歳頃まで成長していきます。近年、顎が小さい子が多くなったと感じています。顎はよく噛むことによって成長していきますが、スナック菓子やハンバーガーなどを手軽に食べられるようになり噛む回数が劇的に減ってきています。噛むという行為は生まれつき備わっているわけではなく学習して噛めるようになります。
そのため、乳歯が生え揃う2歳半〜3歳半ころから噛む回数を増やして鍛えていくことが重要です。噛む回数を増やすために根野菜やりんご、きのこ類を普段の食事に少しずつ取り入れていくのが理想ですが、これらの食材を小さなお子さんに食べてもらうことは親にとって大変な作業になります。
そのため、好きな料理にかみごたえのあるものを取り入れたり、会話をしながらゆっくり食事をするなど工夫をしながら30回を目安に噛んで飲み込む習慣をつけると良いでしょう。
②受け口の原因は下顎だけではない
下顎が前に出ているイメージが強いため、受け口は下顎が原因であると思われがちです。しかし、後天的な理由によって上顎の成長が不十分になり受け口になってしまうケースもあります。以下で上顎の劣成長の原因についていくつか紹介していきます。
◯舌の位置
本来、口を閉じているとき舌は上顎についている状態が正常になります。そして、舌が触れることによって上顎は成長することができます。ところが低位舌といって舌が正常な位置より低い位置にある場合、舌からの持ち上げる力が働かないため、上顎の成長に影響がでることがあります。お子さんが普段から口を開けていることが多かったり、滑舌が悪い場合も舌の筋力が弱く、タ行やナ行の発音が悪いことがあります。
また、食事を飲み込む動作は舌を上顎につけて行うため、舌の筋力が弱いと上手く飲み込めずむせることもあるでしょう。低位舌を改善するには舌に筋力をつけることがいちばんです。噛んだガムを上顎に押し付ける方法や唇の内側を舌で1周させる舌回しなど他にもトレーニング法があります。年齢によって難しい場合もあるので、自分にあった詳しい方法を専門医に相談するといいでしょう。
◯口呼吸
まず、上顎は前方向に成長するとされています。そのため下方向への成長を妨げるため唇・舌・下顎の支えが必要になります。
しかし、口が開いていると舌の位置は下がり唇の力も緩んでしまうため、支える力が不十分となり上顎の劣成長につながってしまいます。アレルギー性鼻炎や花粉症、さらには軟食化やメールの普及により会話が減ったことも口呼吸の増加につながったとされています。低位舌と同様に、口周りの筋肉を鍛えたり鼻呼吸を意識して行うことで改善できることがあります。他にも、歯並びが原因で口が開いてしまうこともあります。矯正治療によって改善することもあるため、お子さんの普段の様子を観察しておくといいでしょう。
◯離乳期の進め方
近年の顎の発育問題には軟食化が急激に進んだこともあげられますが、離乳期に咀嚼や嚥下などを正しく習得出来ていないことも原因といえます。さらに上顎の成長は、誕生してすぐに飲む母乳の舌の使い方に大きく関係しています。食べ物を噛んで飲み込むという口の基本機能は、乳歯列が完成する2歳半ごろには習得しています。そのため、離乳期にこの基本機能を正しく学習出来ていないと結果として顎の成長に影響が出てしまうことになります。
例えば、おもちゃなどをなんでも口に運び舐め回す時期があると思います。それは食べ物に興味を持ち出したり、さまざまな感触に慣れてきた兆候です。どんどん体験させてあげるといいでしょう。前歯が2本ほど生えてきた時期は、舌を上顎に押し付けて食べ物をつぶして食べます。上顎の成長には欠かせない時期ですので、指でつぶせるくらいの硬さが目安になります。
さらに、上下前歯が生え揃う頃はかじり食べの学習をします。前歯でかじって一口量を自分なりに考えて習得しています。食べやすいように、とあまり小さくカットしすぎないように注意しましょう。1歳〜2歳になると手づかみ食べや遊び食べが以前に比べてエスカレートしてきます。親御さんにとっては大変な時期となりますが、手づかみによって一口量を測ったり、後のスプーン食べやお箸を使った食事につながります。また、足を床につけて食べることで力が入れやすく食べる行為をスムーズに行えるため、食事中の姿勢にも気をつけてあげてください。
このように、受け口は下顎だけが問題ではないことがお分かりいただけたと思います。遺伝的要因が0ではありませんが、成長期の癖や離乳期の食事によって症状を軽減させることはできるのです。
③受け口を治すメリット
受け口といっても当然のことながら歯並びや噛み合わせの問題はみんな違い、矯正にかかる期間もさまざまです。また、子供の頃から受け口になるケースも少なくありません。歯の生え変わり時期に治る例もあれば永久歯が生えそろってもそのまま受け口になることもあります。歯列不正が原因の場合、基本的にはワイヤー治療やマウスピース矯正を行いますが、痛みがあったりケアが大変または高額であるというイメージが多く聞かれます。ただ、それらを受け止めたうえで受け口を改善することは、この先の人生においてメリットしかないと思っています。
まず、唾液の分泌量が矯正前と後では格段に増えたという結果が出ています。唾液には口腔内の保護作用・食べ物の消化作用・洗浄作用・殺菌抗菌作用・虫歯を防ぐ・毒素から体を守る排出作用などがあります。
さらに、唾液にはパロチンという成長ホルモンが含まれていて新陳代謝を促す効果があり、若返りにも役立つとされています。今までたくさんご年配者の口を見てきましたが、口の中にトラブルがない方は何でも美味しく食べられて、会話もはずむおしゃべりな方が多いです。高額であることがネックになって治療を迷ってしまう方は多いと思いますが、整備されていない車をトラブルの度に修理するより、初めから環境を整えてトラブルなく過ごした方が不安も解消されるのです。
まとめ
今回は受け口になってしまう原因を、顎の成長と関連づけて説明させていただきました。下顎だけの問題だと思われがちですが、実は幼少期からの習慣や離乳食期からも影響があることがお分かりいただけたのではないでしょうか。今や歯の矯正治療は子供だけでなく大人からご年配の方まで幅広く行われるようになってきました。それだけ歯と健康に関する知識が浸透してきているのだと感じています。全身状態の健康を保つために欠かせないことのひとつに、口腔内環境があることを頭の片隅に入れておいていただけたらと思います。
そして、歯列矯正に興味がある方、気になっている方もぜひ一度梅田キュア矯正歯科の無料カウンセリングにお越しください。梅田キュア矯正歯科では、患者さまの悩みに寄り添いながら、お一人お一人に合った治療方法を提案させていただきます。無料カウンセリングはWEBまたはお電話にてご予約お承りしております(^_-)☆彡心よりご来院お待ちしております!!