「歯列矯正をしたあとに起こる後戻りって何?」と気になっていませんか?後戻りは治療で動かした歯が元に戻る現象を指し、それによって再治療を考える方も少なくありません。場合によっては余計な治療費がかかったり治療期間が延長したりする可能性があるので、予防法をしっかりと理解して対策することをおすすめします。こちらのページでは、後戻りが起こる理由や正しい対策方法について分かりやすくまとめました。現在矯正治療中の方はもちろん治療をご検討中の方もぜひご参考ください。
目次
歯列矯正における「後戻り」とは?
動かした歯が元の位置に戻ろうとする動きを「後戻り」といいます。矯正治療後に後戻りがおこり、整えた歯並びや噛み合わせが再び崩れてしまうケースは珍しくありません。頑張った時間や費用を無駄にしないためにも後戻りを予防する方法を正しく理解しておきましょう。
歯が動く仕組みを理解しよう
後戻りには「歯根膜」の存在が深く関係しています。歯根膜はゴムのような性質をしており、引っ張る力があるため歯を固定をしておかないと元の位置に戻ってしまいます。歯は歯根膜と歯槽骨の破壊と再生を繰り返して動く仕組みですが、その現象は時間をかけて行われるため、移動先で安定するまでは数か月~数年必要です。「歯根膜が後戻りの原因なら、インプラントならその現象は起こらないの?」と疑問を持つ方もいると思いますが、歯を動かすには歯根膜の存在が必要不可欠であるため、それがないインプラントは治療の対象外となります。歯列矯正ができるのは「天然の歯根がある歯のみ」と覚えておきましょう。
歯列矯正後の後戻りはなぜおこる?考えられる主な原因
後戻りの根本的な原因は歯根膜の「引っ張る力」が関係していますが、それを防ぐ対策を怠っていることがトラブルにつながる理由です。以下の内容に心当たりのある方は今すぐ改善を心がけましょう。これから治療を始める方は、正しい管理方法としてぜひ覚えておいてください。
リテーナー(保定装置)を正しく使用していない
メインの治療で整えた歯並びを一定期間固定する装置を「リテーナー(保定装置)」といいます。リテーナーには固定式と取り外し式のものがあり、固定式のタイプは装置が脱離した状態の放置、取り外し式のタイプは装置の装着時間の不足が原因で後戻りを引き起こします。歯の動きが大きいとリテーナーが使えなくなる可能性も高く、作り直しに別途費用がかかったり再治療が必要になったりすることもあるため注意しましょう。
歯並びや噛み合わせに影響する癖を放置している
普段ついやってしまう癖のなかには、歯並びや噛み合わせの崩れの原因になるものもあります。癖をそのままにしていると歯列矯正で整えても後戻りがおこりやすいので、歯列矯正と同時進行で直すようにしましょう。「癖がおこらないよう意識して過ごすこと」が重要になりますが、つい忘れてしまう方も少なくありません。一人暮らしの場合は目につきやすい場所にメモを貼る、ご家族やパートナーと一緒に暮らしている場合は気づいたときに声をかけてもらうのもおすすめです。歯並びや噛み合わせに影響しやすい癖として以下の3つが挙げられます。
口周りの癖
「唇や舌、爪などを噛む」「舌を前に出す」といった癖は、歯に余計な力が加わるため続けていると歯並びや噛み合わせが崩れる傾向にあります。とくに舌を前に出す癖は出っ歯や受け口のリスクが高く、舌が正しい位置にないことで発音や滑舌にも支障をきたすケースも珍しくありません。意識して過ごすことで癖がなくなり、後戻りのリスクを最小限に抑えられます。
姿勢の悪さ
「猫背」は下顎の位置が通常よりも前方にズレるため、噛む位置が変わり一部の歯や顎関節に大きな負担がかかります。その結果歯並びや噛み合わせの崩れを引き起こして後戻りにつながるため、正しい姿勢を意識しましょう。下顎の位置が左右にズレる頬杖も後戻りを引き起こす要因の一つです。
食いしばりや歯ぎしり
食いしばりや歯ぎしりは歯や顎関節に大きな負担がかかるため、その結果後戻りにつながる可能性があります。とくに寝ている間におこる歯ぎしりは、起きている間におこる食いしばりよりも強い力がかかるケースが珍しくありません。下顎を横にスライドさせるタイプの歯ぎしりだと、後戻りだけでなく歯周病の発症や悪化、歯のヒビや破折といったトラブルにつながる可能性も高めです。リテーナーのなかには食いしばりや歯ぎしりに弱いものもありますので、心当たりのある方は事前にスタッフに伝えておきましょう。
リテーナーの種類とそれぞれの特徴について
費用は初めの料金に含まれる場合と追加でかかる場合とがあり、歯科医院によって異なります。取り外しが可能なタイプは基本的に1日20時間以上の装着が必要で、歯の安定とともに装着時間を徐々に減らす歯科医院もあるので気になる方は事前にご確認ください。当院では取り外しが可能なマウスピース型のリテーナーを使用しております。一般的なリテーナーの種類を以下でくわしくみていきましょう。
ベッグタイプ
表側に歯列全体を囲むワイヤーがついているタイプのリテーナーです。取り外しが可能で、抜歯を必要とする症例ではよく使用されます。
ホーレータイプ
表側に前歯部を中心に囲むワイヤーがついているタイプのリテーナーです。見た目はベッグタイプと似ており、同じく取り外しが可能で非抜歯の症例でよく使用されます。
スプリングリテーナー
歯列全体を覆う白い見た目の目立ちにくいリテーナーです。取り外しが可能で、主に後戻りがおこりやすい下顎前歯部に使用されます。コンパクトなため発音や滑舌に支障をきたしにくく、矯正力があるので小さな後戻りであれば修正が可能です。
トゥースポジショナー
歯列全体を覆う白い見た目のリテーナーです。取り外しが可能で、スプリングリテーナーにくらべて厚みがありますが上下顎の小さな後戻りの修正ができます。シリコン製で歯ぐきを
傷つけにくいのが特徴です。
インビジブルリテーナー
歯列全体を覆う透明な見た目のリテーナーです。取り外しが可能で透明なため見た目の変化が少なく、装置が薄いため発音や滑舌への影響はほとんどありません。噛みしめる力が強いと破損する恐れがあるため、食いしばりや歯ぎしりの癖がある場合は注意が必要です。
フィックスタイプ
前歯の裏側にワイヤーを貼り付けるタイプのリテーナーです。固定式なため装着時間を気にせずに過ごせて、正面から装置が見えないことから取り外し式よりも目立ちません。脱離した場合は歯科医院での付け直しが必要です。
整えた歯並びを固定するリテーナーの使用期間はどのくらい?
リテーナーの使用期間は、患者様のもともとの歯並びの状態や歯科医院によっても異なりますが、メインの治療と同じ期間使用するケースが一般的です。リテーナーを使用している間も定期的なメンテナンスは必要なので、忘れずに受けるようにしましょう。後戻りだけでなく虫歯や歯周病といった別のトラブルの予防や早期発見にも役立ちます。
【保定装置と後戻りについてのよくある質問はこちらをクリック★】
リテーナーを正しく使用して矯正治療後の後戻りを防ごう
矯正治療後の後戻りは「リテーナーを正しく使用していない」「口周りや生活のなかでの癖をそのままにしている」といった理由から起こるケースがほとんどです。歯並びや噛み合わせの崩れが徐々に治っていくのを目で確認できるメインの治療のときとは違い、変化が目に見えない時期に使用するリテーナーだからこそモチベーションの維持がより難しくなります。せっかく整えた歯並びや噛み合わせを再び崩れてしまわないよう、後戻りのリスクを十分に理解して「リテーナーの正しい使用」と「癖の改善」を心がけましょう。