矯正を始めたいと考えている方の中には、治療に踏み切れず迷っている方も少なくありません。「気になるところだけ治したい」「全体矯正は大げさかも…」と考える方も多くいらっしゃいます。部分矯正は、矯正治療の選択肢の一つとして、費用や治療期間の負担を抑えながら歯並びを整えたい方に適した方法です。比較的気軽に始められる点も魅力の一つです。今回は、部分矯正の特徴や全体矯正との違い、対応できるケースについて詳しく解説します。
部分矯正とは?
部分矯正(MTM)は、1本から数本の歯を対象とした特定の範囲の矯正治療です。一般的には、上下の犬歯から犬歯までの前歯12本を中心に治療されることが多いです。また、過去に矯正治療を受けたものの、一部の歯が後戻りしてしまった場合の修正にも用いられます。この治療の目的は主に見た目の改善であり、噛み合わせの調整は行われません。
部分矯正のメリットとデメリットを知ろう

◎メリット
1. 局所的に治療できる
周囲の歯に大きな負担をかけることなく、前歯の見た目が気になる箇所に絞って治療ができるため、短期間で理想の歯並びに近づけることが可能です。
2. 目立ちにくい
装置が取り付けられる範囲が狭いため、見た目の変化が少ないこともメリットの一つです。歯の裏側に装置をつける裏側矯正(舌側矯正)を選べば、さらに目立ちにくくできます。
3. 治療期間が短い
数ヶ月から1年程度の短い期間で治療が完了します。治療を短期間で終えたい方にとって、気軽に始めやすい選択肢です。
4. 違和感や痛みが少ない
局所的な治療になるため、装置の違和感や歯を動かす痛みも軽減されます。全体矯正よりも比較的快適に治療を受けることができます。
5. 費用の負担が軽減できる
部分矯正は特定の歯のみを対象とするため、費用が少なく抑えられます。そのため、噛み合わせに問題がなく、見た目を整えたい方にとって、手軽な治療法として選ばれることが多いです。
◎デメリット
1. 噛み合わせの調整ができない
部分矯正は、特定の範囲が治療対象となるため、全体の噛み合わせのバランスが調整できません。噛み合わせが悪い状態を放置すると、将来的に歯並びの悪化や歯周病、顎関節症のリスクを引き起こす可能性もあります。
2. 口腔機能の改善が難しい
口腔機能に問題がある場合、「顎に負担がかかる」「食べ物をしっかり噛めない」「発音がはっきりしない」といった症状が現れることがあります。これらの問題は、骨格や噛み合わせが原因となっていることが多いため、部分矯正だけでは根本的な改善が難しいことがあります。
部分矯正が適応するケース・向かないケース
◎適応するケース
1. 軽度のすきっ歯
前歯の小さな歯間の隙間を閉じることが可能です。食事中に物が挟まりやすい、見た目が気になるなどの理由で、特定の範囲にある前歯の隙間を改善したい方に適しています。
2. 軽度の叢生(乱ぐい歯)
軽度の歯列の凸凹や、八重歯のみを整えることが可能です。見た目の印象が良くなるだけでなく、歯の清掃がしやすくなり、虫歯や歯周病の予防にも役立ちます。
3. 軽度の出っ歯
前方に傾いている歯を内側に引っ込める調整が可能です。口元の突出や、見た目の問題を改善できます。
◎向かないケース
1. 広い範囲の歯列不正
すきっ歯や歯の凸凹の範囲が広い場合、奥歯の位置や歯列全体のバランスが取れないことが考えられます。
2. 骨格的な原因がある
「上顎前突(出っ歯)」や「下顎前突(受け口)」など、骨格的な要因で歯列が不正咬合となっている場合、全体矯正や外科矯正が必要になることがあります。
3. 重度の歯列不正
歯の位置が大きくずれていたり、歯の重なりやねじれが強い場合、歯が並ぶスペースを作るために抜歯が必要になることがあります。このような場合には、すべての歯を対象に調整する必要があります。
4. 噛み合わせの問題がある
噛み合わせに不具合がある場合の治療には適していません。例えば、上下の歯が適切に噛み合わない「開咬」や、深く噛み合っている「過蓋咬合」などの不正咬合は、部分的な歯の移動がかえって噛み合わせに悪影響を与えるリスクがあります。
5. 歯の本数が不足している
先天的に歯が欠如している場合や、虫歯や歯周病で歯が抜けてしまったり、過去に抜歯を受けて歯の本数が少ない場合は、全体的に歯列のバランスを整える必要があります。
部分矯正と全体矯正を5つのポイントで比較

①治療にかかる期間
部分矯正は、通常数ヶ月から1年程度で終了しますが、全体矯正は通常1年半から3年程度かかり、症例によってはさらに長期的な治療が必要になることがあります。ただし、期間が長くなる分、調整精度は高くなります。
②適応症例
◎部分矯正
● 軽度の出っ歯
● 軽度のすきっ歯
● 軽度の叢生(八重歯のみの治療など)
◎全体矯正
● 噛み合わせを含む重度の不正咬合(出っ歯・受け口・叢生・開咬・上下顎前突など)
● 広範囲のすきっ歯
● 抜歯が必要な矯正
③治療の費用
部分矯正は全体矯正と比べて治療費が安く済むことが一般的です。治療の範囲が狭いため、装置の数が少ないことや、調整時間も短くなるためです。対して全体矯正は、使用する装置の数が多く、噛み合わせを含めた細かい調整が必要となるため、費用が高くなります。
④治療の効果
全体矯正は、歯列全体のバランスを考慮しながら、噛み合わせも含めて調整できます。そのため、審美的な改善に加えて安定性が高く、後戻りが少ない傾向があります。歯並びだけでなく、噛み合わせを適切に整えることで、長期的な維持がしやすくなります。一方、噛み合わせが不安定なままの状態で前歯だけを部分的に矯正を
行うと、噛む力の影響を受けて再び歯が元の位置に戻ろうとすることがあります。矯正治療を検討する際は、見た目だけでなく、噛み合わせの安定性を考慮しながら、適切な方法を選ぶことが大切です。
⑤矯正の種類
部分矯正と全体矯正は、どちらも一般的な矯正方法が利用され、症状や患者様のご要望に応じて最適な方法が選ばれます。代表的な矯正方法は、ワイヤー矯正とマウスピース型矯正(インビザライン)が挙げられます。ワイヤー矯正には、表側矯正と裏側矯正(舌側矯正)があります。歯にブラケットを取り付け、そこにワイヤーを通して歯を動かします。一方で、マウスピース型矯正(インビザライン)は、透明なマウスピースを使用して歯を少しずつ移動させます。
矯正治療を失敗しないためのコツ
部分矯正には多くの魅力がありますが、適切でないケースでは、一時的に歯並びが整っても、後戻りや噛み合わせの乱れが生じることがあります。見た目の改善を重視される方が多いですが、実際には別の問題が隠れていることも少なくありません。そのため、当院では、部分矯正をご希望の患者様にも、噛み合わせの影響を踏まえたうえで、全体矯正を考慮した治療計画をご提案することがあります。矯正治療は、見た目を整えるだけでなく、噛み合わせや口腔機能の向上も目的としています。治療後に後悔しないためにも、専門医と相談し、自分に合った方法を選びましょう。
まとめ
気になる歯並びだけを治療したい方にとって、期間を短縮でき、リーズナブルに治療できる点が部分矯正の大きな魅力です。しかし、噛み合わせや骨格の位置が適切でない場合、根本的な改善が難しくなることがあります。そのため、治療開始前に精密検査を受け、症状に合った治療法を選ぶことが大切です。当院では、3Dシミュレーションを活用し、治療結果を比較することで、仕上がりを視覚的に確認でき、患者様が納得した上で最適な治療法を選択できるようサポートしています。自分に最適な治療法が気になる方は、ぜひ当院のカウンセリングへお越しください。