歯並びを整える場合、歯列矯正を選択される方は多いでしょう。歯列矯正は歯に固定するワイヤー矯正や取り外し式のマウスピース型矯正などさまざまな種類があります。どちらの装置を使用する場合も治療の途中でゴムかけを行う場合があり、矯正治療を開始してはじめて使用することを知る方も少なくありません。そこで今回は、矯正治療中に行うゴムかけの特長やゴムかけをさぼるとどうなるのか、ゴムかけの種類、ゴムかけを忘れないための注意点を解説します。
目次
ゴムかけとは?
ゴムかけは、矯正ゴム・顎間ゴムと呼ばれる矯正装置です。まずはゴムかけの目的や期間、手順を解説します。
ゴムかけの目的
ゴムかけの目的は歯の移動や噛み合わせを整えるためです。歯を動かしたい方向に効率よく動かすことを目的としています。また上や下の噛み合わせを細かに整えるために上と下の歯に左右対称にかけてぴったりと噛み合うようにします。ゴムの直径で引っ張る力の強さを変更したり、引掛ける向きで歯を動かす方法を変えたりすることができます。歯並びの状態に合わせて使用方法は皆様異なりますので、治療計画をご提案する際に詳しくお話しさせていただきます。基本的にはご自宅や外出先で、ご自分で行っていただくためわからないことがありましたら何でも矯正歯科にご相談ください。食事や歯磨き以外の間はゴムかけを行っていただくため、1日20時間以上は使用していただく必要があります。
ゴムかけの期間
ゴムかけの期間には個人差があり、数ヶ月から数年にわたることもあります。基本的にワイヤー矯正装置やマウスピース型矯正により「歯並びの見た目」「噛み合わせ」は整えることが可能です。しかし、歯を効率よく動かしたり、綿密に噛み合わせを合わせたりすることまではどうしても固定式や取り外し式の装置だけでは限りがあることがあります。そこで装置を用いた歯列矯正である程度歯並びが整ってきた段階や歯を抜いて大きく動かす段階で使用していただくと効率よく歯並びを整えることができます。歯の動き方には個人差がありますので、いつまで矯正ゴムをするのかは歯科医師の指示にしたがいましょう。また、歯が動きやすい方とそうでない方は実際にいらっしゃいます。歯を支えている顎の骨の代謝がよいと歯が動きやすいとわかっています。大人よりもお子様の方が歯は動きやすく、運動している人の方が骨代謝はよい傾向がありますよ。
ゴムかけの手順
ゴムかけは、歯に装着した矯正装置のフックにご自分で引掛ける必要があります。動かしたい歯や噛み合わせを整えたい場合は歯に装着しているブラケットをフック付きに変更することもあります。また、マウスピース型矯正は透明のトレーにフックを装着するわけではなく、歯に透明の樹脂のボタンのような装置を貼り付けることがあります。矯正歯科で手順は説明させていただきますので、しっかり練習してからご自宅でお試しいただけますよ。慣れるまでは手鏡を利用していただくのがおすすめですが、慣れてこれば鏡を見なくても簡単に矯正ゴムを引掛けられるようになります。
ゴムかけをさぼるとどうなるの?
「矯正装置をしているからゴムをかけなくてもよいのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。もちろん固定式や取り外し式の矯正装置を使用しているため矯正ゴムをかけなくてもある程度は整って行くでしょう。しかしさぼると以下のようなデメリットがあります。
矯正治療期間の延期
ゴムかけを適切な時間や期間使用しないと、計画通りに治療が進まないことがあります。パッと見て歯並びがきれいだからといって自己判断で使用をやめてしまうと矯正治療期間が伸びてしまうリスクが高まります。また、一定の力がかかっていた部分に力がかからなくなるため悪い歯並びに後戻りする恐れもありますので、矯正治療が終えられるのが遅れる場合も。
歯の動きに差が出る
矯正ゴムを使用し忘れると歯の動きに差がでることがあります。歯の動きはすべて一定でないため、左右や上下にも差がでることがあります。このような場合にも使用して左右の歯の動きのバランスを取ったりすることもあるため、矯正装置だけでは右の歯ばかり動くなどの差が出る可能性も考えられるのです。動きの悪い部分にかけることで効率よく歯を動かす場合がありますので、できるだけ毎日忘れないようにしましょう。
痛みと不快感
一定の力が歯にかかっていたのに、外してしまうと反動で歯が痛くなったり、違和感があり不快に感じたりすることがあります。歯がせっかく後方に動いても使用するのをやめたことで後戻りをして前方に戻ろうとして痛みを感じることもあります。
矯正ゴムかけの種類
ゴムかけは歯並びにより引掛け方が異なります。大きく4種類のゴムかけの方法をみてみましょう。
2級ゴム
2級ゴムは、出っ歯(上顎前突)の歯並びの方に使用することが多いです。
出っ歯といっても、大きく2種類あります。
・上の歯が唇側に傾斜している状態(歯性)
・上顎が前方に出ている状態(骨格性)
この中でも歯並びが原因で出っ歯になっている場合は、ゴムかけを行うことで効率よく上の前歯を後方に動かすことができます。上の前歯と下の奥歯に矯正ゴムをかけることで歯を動かすのです。
3級ゴム
3級ゴムは、受け口(下顎前突)という歯並びに用いられることが多いです。受け口は別名「反対咬合」とも呼ばれています。2級ゴムのときとは反対のゴムのかけかたで、上顎の奥歯と下顎の前歯にそれぞれゴムをかけることで、下の前歯を後方に移動させます。
垂直ゴム
垂直ゴムは、上下の歯に垂直にゴムをかける方法です。これにより上下の噛み合わせをよりしっかり合わせることができます。上下の前歯などに隙間ができているとしっかり食べものを噛むことができないため、ぴったり噛み合わせるためにゴムかけを行います。
交叉ゴム
交叉ゴムはクロスゴムとも呼ばれており、上の表の歯と下の裏側の歯にあるフックにゴムを引掛けます。通常は上の前歯が唇側にあり、下の歯を覆っていますが、反対の噛み合わせになっている場合は改善するために、クロスゴムを用います。一部の噛み合わせが反対になっている場合に用いることが多いです。
ゴムかけを忘れないための注意点
矯正ゴムかけを忘れないためには、以下を実施することが大切です。
指示通りのゴムかけをする
歯科医師に指示された通りのゴムかけを行うことが大切です。ゴムかけの場所が途中で変更されることもあるため、矯正装置にフックがいくつもついて
いる方もいらっしゃいます。そのため間違えのないように指示通りの場所で使用しましょう。
歯磨き後にすぐにつける
ゴムかけは基本的には1日中行っていただくのですが、食事中や歯磨きの際には外して過ごしていただけます。そのため、歯磨き後に忘れないように装着する癖をつけましょう。リマインダー機能などを使って使用するのを忘れないようにするのもおすすめですよ。
予備を持ち歩く
ゴムかけは1日中使用していただくのですが、食事や歯磨きの際には外す必要があります。使い捨てのため再利用することはできません。そのため矯正歯科では使用を開始する患者様には予備のゴムをお渡しさせていただきます。次の来院日までの量をお渡しいたしますのでご安心ください。外出先でも新しいものに交換できるように予備を持ち歩いておきましょう。また、予備の矯正ゴムを無くしてしまった場合は早めに歯科医院にもらいにきてください。