歯列矯正の治療中は痛みが出たりトラブルが起きることは珍しいことではありません。
マウスピース矯正で起こりうる痛みの原因や対処方法を知っていれば予防できる場合もあるので、安心して矯正治療を進行できるように説明していきます。
マウスピース矯正中の方やこれから治療開始する方は参考にしてください。
目次
マウスピース矯正とは
マウスピース矯正とはプラスチック素材の透明なマウスピースを毎日20時間以上装着して歯を動かす矯正方法です。
マウスピース矯正は歯科医院で採った歯型やレントゲン写真などの資料を元に、製造会社が歯の動きをシミュレーションして、オーダーメイドのマウスピースを制作します。
予め数枚のマウスピースをもらい、約2週間毎にご自身でマウスピースを交換して治療を進めて行くため、歯科医院に通院する回数が少なく、2~3ヶ月に1回程です。
痛みが出た場合、自己判断で長時間外したりしていると治療が計画通りに進まなかったり、後戻りの原因になります。
通院回数が少ないことはメリットでもありますが、次の受診日まで期間が空いてしまうので、痛みが続く場合は我慢せずに必ず受診しましょう。
マウスピース矯正中の痛みの原因
マウスピース矯正中に起こりやすい痛みの主な原因は、以下のとおりです。
1 歯が動くことによる痛み
マウスピース矯正はワイヤー矯正と比較すると、痛みは少ないと言われています。
ワイヤー矯正は歯に力を加えて歯を動かしていくため、強い痛みを感じやすいです。
それに比べてマウスピース矯正は、0.25~0.35㎜ずつ歯が動くよう設計されたオーダーメイドのマウスピースを装着し、少しずつ歯を動かしていくので強い痛みが出にくい治療法になっています。
しかしマウスピースの装着には違和感や窮屈感は感じやすく、慣れるまで時間が必要です。
上下の歯にゴムをかけて歯の移動の補助を行い、より早く歯並び・咬み合わせを整えるために「顎間ゴム」を使用することがあります。
顎間ゴムの使用はマウスピース矯正だけに限らずワイヤー矯正でも使用される事が多く、ゴムの輪の大きさがいくつかあり、輪が小さい程歯にかかる力が大きくなります。
ゴムの伸縮性を利用し歯を正しい位置に移動させるので、装着した際には鈍い痛みを感じることがあります。
最も痛みが感じやすいのが、新しく装着してから3~6時間後から3日間程ですが、徐々に落ち着いてくることが多いです。
2 マウスピースの縁が当たる
マウスピースの縁が滑らかでなかったり欠けていると、歯茎や頬に擦れて痛みが生じることがあります。
マウスピースが歪んでいたり、長期間使用していないと歯並びが変わってしまい不適合なことによって、縁が当たるケースもあります。
長時間当たっていると外傷や口内炎を引き起こしてしまいます。
我慢の必要はないですが、自己判断で紙ヤスリで研磨したりハサミで切り落としたりはしないで、必ず歯科医師に相談しましょう。
3 アタッチメントが当たる
マウスピースと歯を密着させてより早く歯を動かすために、直接歯にアタッチメントと呼ばれる突起物をつけることがあります。
アタッチメントの上からマウスピースを装着するので、普段は違和感なく過ごせれると思いますが、マウスピースを取り外す際にアタッチメントに引っかかって痛みを引き起こすこともあります。
またマウスピースを外しているお食事や歯磨きの時など、アタッチメントの先が頬に当たって痛みが生じることもあります。
はじめは痛みを感じなくても、慢性的に刺激が加わることで口内炎ができて痛みを感じるケースも少なくありません。
痛みが生じた時の対処法
長期に渡り治療を進行していく上で痛みを我慢する必要はなく、適切な対処を行うと解消する場合があります。
1 痛み止めを服用する
通常は骨に固定されて動かない歯を、力を加えて無理矢理動かしているので、マウスピースを初めて装着した時や交換した時、顎間ゴムを装着した際には痛みが出やすいです。
上記でも述べた通り、3~6時間後から3日間程痛みのピークを迎えますが、マウスピース矯正はワイヤー矯正と比較すると痛みは少なく、徐々に痛みが和らいでくるでしょう。
しかし痛みの感じ方は個人差があるので、もし痛みが強い場合は痛み止めを服用しても大丈夫です。
市販の鎮痛剤を服用しても問題ないですが、歯科医師に相談すると鎮痛剤を処方してもらえる場合があるので、心配な方や痛みが強い方ぬは1度相談してください。
歯が痛くて矯正治療が嫌になりそうな時は、歯が動いているから痛みが出ているので、歯並びが綺麗になっていってると前向きに捉えて、最後まで頑張って乗り越えましょう。
2 マウスピースやアタッチメントを調整する
マウスピースの縁が歯茎や粘膜に当たって痛みが出ている場合は、歯科医師に相談して尖っている部分を調整してもらうと解消します。
ご自身で調整を行うとマウスピースの形が変わってしまったり、削りすぎてしまうと歯に覆う面積が少なくなり矯正力が弱まる可能性があるので、歯科医師に調整してもらう方がスムーズです。
アタッチメントが当たり擦れたり痛みが出る場合も、アタッチメントの先に保護材をつけてカバーしたり、研磨して丸みを出すことで症状が落ち着いてきます。
どちらも歯を計画的に移動させるための大事な矯正装置なので、ご自身の判断で削ったりせず、歯科医院を受診して調整してもらいましょう。
3 刺激の少ない食べ物を選ぶ
矯正治療中は歯が動くことによって、歯の周りにある組織が炎症しているので、お食事の時に敏感に痛みを感じやすいです。
食事の際に感じる食感などは、歯ではなく歯と骨の間にある歯根膜で感じています。
そのため、固いものや咀嚼回数が多いものを食べたときは、痛みが出て噛むことが苦になる場合もあります。
無理して固いものを噛むと歯に負担がかかり、痛みが長引く可能性があるので、症状が落ち着くまで柔らかい物を食べるように心がけましょう。
パンは柔らかいように思いますが、噛んでいると粘着質になり噛む力が必要な食べ物なので注意してください。
痛みが出ているときの注意点
マウスピース矯正中に痛みが発症しても、以下の事には注意してください。
マウスピースの装着時間を守る
マウスピース矯正は1日20~22時間装着する必要があり、お食事やブラッシング時以外は基本的に装着したままが望ましいです。
しかし痛みを伴っているからといってマウスピースを指示通りに装着していないと、矯正の効果が得られず、計画的に治療を進めることができません。
マウスピースを外している時間が長いと、今まで移動した歯が元に戻ってしまう「後戻り」が起きたり、治療が進まずマウスピースの作り直しが必要になる可能性が考えられます。
そうなると、追加費用がかかり治療の長期化の原因になるので、自己判断でマウスピースを外すことはやめましょう。
痛みが長く続く場合は、歯科医師に相談し歯や歯根に異常がないか診察してもらうことをおすすめします。
刺激を避ける
矯正治療は歯に力を加えて動かしているので、歯や歯周組織が不安定な不安定な状態になっています。
その状態で固い物を噛んだり、食い縛ったり力強くブラッシングを行うと痛みが増しやすいです。
さらに痛みを冷やしたり紛らわしたりする方も多いですが、冷やすことで血の循環が悪くなり、歯が動きにくくなります。
反対に温めることで、血の循環が良くなり痛みが強くなることがあるので、矯正中に刺激を与えず安静に過ごすようにしましょう。
マウスピース矯正は装着時間や交換時期など自己管理が重要なので、しっかり指示を守る事が痛みの予防に繋がります。
痛みやトラブルが生じてもご自身で判断せず、歯科医師に相談して対処してもらいましょう。