矯正にもいくつか種類があり、それぞれ特徴があります。歯の表側に装置をつける表側矯正、歯の裏側に装置をつける裏側矯正のほかに、上の歯は裏側に下の歯は表側に装置をつけるハーフリンガル矯正があります。ご自分に合った矯正方法を選択するために、それぞれの特徴を知っておくことは大切です。そこで今回は、ハーフリンガル矯正を選ぶメリットについて解説させていただきます。
ハーフリンガル矯正とは?
ハールリンガル矯正は、表側矯正と裏側矯正のそれぞれのメリットを合わせ持つ矯正方法です。装置が見えやすい上の歯は装置を裏側につけて、装置が見えにくい下の歯は表側に装置をつけるため、目立ちにくい方法です。下の歯は装置を裏側につけると舌の稼働域が狭くなり、慣れるまで滑舌や発音に影響が出る場合がありますが、表側につけるためその影響は少なくなります。また、下の装置は表側につけるスタンダードな装置のため、両方裏側に装置をつける裏側矯正(舌側矯正)と比較すると費用を抑えることができます。
ハーフリンガル矯正のメリット
1 矯正装置が目立ちにくい
上の歯は歯の裏側に装置をつけるため、周囲の方からほとんど見えません。下の歯は表側に装置がつきますが、普段見えにくい部分のため、矯正装置の見た目が気になる方におすすめの方法です。
2 裏側矯正(舌側矯正)より費用を抑えることができる
裏側矯正は歯の裏側に装置をつけるため、歯科医師の技術力や経験が必要です。そのため、上下とも裏側矯正にする場合には表側矯正と比較すると高くなります。ハーフリンガル矯正は見えにくい下の歯は表側に装置をつけることで、費用と審美性のバランスを取ることができます。裏側矯正(舌側矯正)とハーフリンガル矯正を比較すると、ハーフリンガル矯正の方が費用を抑えて治療することが可能です。
3 食事のストレスが少ない
表側矯正の上の歯は、食べ物が詰まると周囲の方が気づきやすい部分ですが、裏側に装置をつけることで、食べ物が詰まっても目立つことがありません。また、裏側は唾液の効果が発揮しやすく、汚れも洗い流しやすい部分です。
4 出っ歯を治しやすい
出っ歯は前歯が出ていたり、前に傾いていたりする状態です。ハーフリンガル矯正は、内側から歯を引き込む力をかけることができるため、出っ歯を効率的に動かすことができます。
5 発音や滑舌への影響が少ない
下の歯の内側に装置をつけると舌の動きが制限されることがあり、慣れるまで発音や滑舌に影響が出る場合があります。下の歯は表側に装置をつけるハーフリンガル矯正は、舌の稼働域が変わらないため、発音や滑舌に影響が少ない矯正方法です。
6 舌の違和感を軽減
下の裏側に装置がつくと舌に装置が触る場合がありますが、ハーフリンガル矯正は下の歯は表側に装置がつくため、舌の違和感を軽減します。
7 スポーツへの影響を軽減できる
上の歯は裏側に装置をつけるため、粘膜に装置が当たりにくくなります。接触のあるコンタクトスポーツの際に、影響を軽減することができます。
ハーフリンガル矯正のデメリット
1 歯並びや噛み合わせによっては適用にならない場合がある
ハーフリンガル矯正は、多くの歯並びに対応ができますが、噛み合わせが深すぎる「過蓋咬合」の場合は装置をつけることが難しい場合があります。過蓋咬合は、上の歯が下の歯に覆い被さっている状態です。装置が当たってしまう可能性があるため、適用にならないケースがあります。矯正方法はいくつか種類がありますので、患者様の歯並びの状態を考慮してより良い方法をご提案いたします。
2 歯並びによっては審美的なメリットが感じにくい
ハーフリンガル矯正は、審美性と費用のバランスを考慮した治療ですが、矯正装置が目立ちにくいかは歯並びによっても異なります。笑った時や話す時に上の歯の方が見えやすい方は、ハーフリンガル矯正のメリットを受けることができますが、下の歯が目立つ方はメリットを感じにくいといえます。ハーフリンガル矯正は、下の歯が目立つ方は装置が見えやすくなってしまうため、ハーフリンガル矯正の恩恵を受けにくくなります。
3 食べ物への配慮が必要な物がある
ハーフリンガル矯正は、固い物を食べると装置に負担がかかって外れやすくなってしまうことがあります。また、粘着性のある物を食べる装置について取れにくくなることもあります。そのため、食べ物への配慮が必要な物があるため、注意しましょう。
4 歯磨きがしにくい
ハーフリンガル矯正は固定式の装置のため、取り外しができません。食事も歯磨きの時も装置をつけたまま行います。そのため、ブラケット装置に食べ物が詰まることもあり、歯ブラシが当たりにくいデメリットがあります。また、装置が表側と裏側についているため、それぞれのコツをつかむまでに時間がかかりがちです。しかし、矯正期間中に歯磨きを怠ると、むし歯や歯周病を発症するケースもあるため、丁寧に歯磨きすることが大切です。
ハーフリンガル矯正の期間や通院頻度
矯正治療は、元の歯並びによっても治療期間が異なります。平均的なハーフリンガル矯正の矯正期間は2年~2年半程度です。歯を動かす矯正期間の後に、その歯並びを維持する保定期間が動的矯正期間と同程度の期間あります。この期間は後戻りをしないための大切な時期です。取り外し式の保定装置を使うことが多くなりますが、指示の合った時間必ず装着するようにしましょう。また、ハーフリンガル矯正の通院頻度は、3~6週間に1度程度調整が必要なため、その期間で通院していただきます。
そのほかの矯正方法
表側矯正
表側矯正は、歯の表側にブラケット装置とワイヤーを用いて歯並びを整える方法です。従来から数多くの方を治療してきたスタンダードな方法で、多くの歯並びに対応しています。以前は、金属の装置を使うことが多く、装置が目立つデメリットがありました。矯正中の装置の見た目を考慮して、白や透明の審美ブラケットや審美ワイヤーを選択できます。
裏側矯正
裏側矯正は、歯の裏側にブラケット装置とワイヤーを使って歯並びを整える方法です。歯の裏側に装置をつけるため、周囲の方に装置が見えることがほとんどありません。矯正中の装置の見え方が気になる方におすすめの矯正方法です。歯の裏側に装置をつけるため、歯科医師の経験や技術力が必要になります。すべての矯正歯科で対応しているわけではないため、裏側矯正を希望する場合にはホームページで確認してから相談しましょう。
マウスピース型矯正
マウスピース型矯正は、スキャニングカメラを使ってお口の情報を把握し、お口にぴったり合ったマウスピースを作製します。少しずつ形の違うマウスピースに交換しながら歯並びを整えていきます。固定式の装置ではなく取り外しができるため、食事や歯磨きを今まで通り行うことができます。また、透明のマウスピースを使用するため、装置をつけた時の見た目も気になりにくい矯正方法です。ただし、取り外しができる分自己管理が必要になります。1日20~22時間の装着が必要ですが、外している時間が長くなってしまうと治療計画通りに歯が動かなかったり、マウスピースが合わなくなってしまったりすることもあります。
【まとめ】
矯正治療にはそれぞれ特徴がありますが、ハーフリンガル矯正は、矯正装置が目立ちにくく費用のバランスもとれる矯正方法です。上の歯は、内側に装置をつけるため、出っ歯を内側に動かす歯並びも効率的に動かすことが可能です。ただし、歯並びによっては適用にならない場合や下の歯が目立つ場合にはハーフリンガル矯正の審美的メリットが得られにくいこともあるため、状況に応じて矯正方法を選択する必要があります。当院は、裏側矯正の実績も多く、ハーフリンガル矯正にも対応していますので、患者様に合った矯正方法をご提案いたします。