目次
歯科矯正用アンカースクリューとは?どこに打つの?いつまで付けるの?
近年の矯正治療では、歯科矯正用アンカースクリューを使用するケースも少なくありません。とはいえ「スクリューはどこに打つの?」「いつまで付けていればいいの?」といった疑問や不安をもつ方もいると思います。そこで、この記事では歯科矯正用アンカースクリューの打つ場所や付ける期間について紹介します。また、歯科矯正用アンカースクリューのメリットやデメリットなどについてもあわせて解説。これから矯正を始める方は是非この記事を参考にしてください。なお、当院の矯正治療に興味のある方は、こちらもあわせてご覧ください。【当院の矯正治療について】
歯科矯正用アンカースクリューとは?
歯科矯正用アンカースクリューとは直径1.4〜2mm、長さ6〜10mmほどの小さなネジのこと。このネジを顎の骨に埋めて歯を動かす時の固定源にすることで、効率的に歯を動かせるよ
うになります。アンカースクリューは身体に馴染みやすいチタンという金属で、拒否反応が出にくく優しい材質です。
歯科矯正用アンカースクリューはどこに打つ?
歯科矯正用アンカースクリューは、歯並びの状態や歯を動かす位置によってアンカースクリューを打つ箇所は変わります。アンカースクリューを打つ場所は、主に次の部分が一般的です。
● 奥歯に打つ
● 上顎の裏側に打つ
● 奥歯より後ろ側に打つ
● 片側だけに打つ
それぞれについて詳しく解説していきます。
奥歯に打つ
上顎の前歯が出ている「出っ歯」や下顎の前歯が出ている「受け口」の歯並びは、前から4〜5番目あたりの歯茎に歯科矯正用アンカースクリューを打つ場合があります。アンカースクリューを使うことで前歯を無理なく内側に引っ張れ、横顔のラインが美しく仕上がります。他にも、上下の前歯に大きな隙間がある「開咬」や笑った際に歯茎が多く見える「ガミースマイル」などの歯並びでも、奥歯の周辺にアンカースクリューを打つケースが多いです。
上顎の裏側に打つ
前歯や奥歯を含めた歯並び全体を後ろに動かす際は、上顎の裏側に歯科矯正用アンカースクリューを打つケースがあります。たとえば、ガタガタな歯並びの「叢生(そうせい)」では歯並びを整えるだけだと、歯が前に出て口元が目立つ状態になりやすいです。しかし、アンカースクリューは奥歯を含めた歯列全体をさらに奥側へと動かせるため、口元が前にでないように治療できます。また、上顎に1〜2本のスクリューを入れた場合はアームと呼ばれるワイヤーなどの矯正装置を装着して、歯を移動させるのが一般的です。
奥歯より後ろ側に打つ
奥歯を後方に動かしたい時は、奥歯より後ろ側の歯茎にアンカースクリューを打つことも少なくありません。奥歯をさらに後方に動かすと隙間ができ、前歯がキレイに並びやすいです。
前歯に打つ
歯科矯正用アンカースクリューは、歯を根っこ側に負担をかける(圧下)動きも得意です。たとえば、笑った時に歯茎の幅が広く見える「ガミースマイル」の場合はアンカースクリューを前歯に打ち、前歯の位置を上げると笑った時に見える歯茎の幅を小さくでき、見た目が改善します。
片側だけに打つ
歯科矯正用アンカースクリューは、動かしたい歯の近くにアンカースクリューを打つことで、微細な動きが可能。特に左右の噛み合わせのバランスが悪い場合には、片側に1本だけアンカースクリューを打ち歯を圧下させることで、噛み合わせの傾きや見た目のバランスを改善できます。
歯科矯正用アンカースクリューの5つのメリット
歯科矯正用アンカースクリューでは、次の5つのメリットがあります。
● 非抜歯での矯正が可能
● 治療期間の短縮
● 理想の口元を実現
● 外科矯正を避けられる
● 見た目の改善・患者の負担軽減
それぞれについて詳しく解説していきます。
非抜歯での矯正が可能
通常は歯が並ぶスペースを確保する際に抜歯が必要ですが、自身の健康な歯を抜くのに抵抗がある方は少なくありません。歯科矯正用アンカースクリューを行うことで、抜歯をせずに矯正ができる可能性が高くなります。たとえば、一般的な矯正治療では奥歯をさらに奥側に移動できますが、少しの距離しか動かせません。しかしアンカースクリューを使えば、奥歯を大きく後ろ側に動かし歯が並べるスペースを確保できるため、抜歯をせずに矯正治療ができるケースが多いです。
治療期間の短縮
歯科矯正用アンカースクリューでは、短い期間で治療が終了する可能性があります。通常の矯正治療では奥歯を固定源にして、歯並びを整えるのが一般的。しかし、前歯を引っ張ると同時に奥歯も引っ張られてしまい、奥歯が前に倒れてしまうことがあります。そのため前歯をいっぺんに動かすのではなく、1〜2本だけを引っ張って動かす必要があり治療期間が長くかかる傾向です。いっぽうで、アンカースクリューは顎の骨にしっかりと固定しているため、前歯を一気に動かして治療を効率的に進められます。その結果、予定していた期間より矯正治療が早く終わることがあります。
理想の口元を実現
従来、重度の歯並びはキレイにできる範囲に限界がありました。しかし、歯科矯正用アンカースクリューを使用することで奥歯をさらに後ろ側に動かす、歯を根っこ側に下げる、特定の歯だけを動かすなど、さまざまな動きができ質の高い矯正治療が実現。自身が理想とする口元を手に入れることができます。
外科矯正を避けられる
重度の歯並びや歯並びの悪い原因が顎の骨にあるケースは、外科手術が必要な場合がほとんどです。たとえば、ガミースマイルは前から4番目の歯と顎の骨を取り除いて前歯を後ろに移動させるセットバック(上顎前方歯槽骨部骨切術)や上顎の一部に骨を切り取る、上顎骨切り術といった外科手術が必要になることがあります。
外科手術が必要になると、身体的・精神的にも負担が大きくなる傾向です。しかし、歯科矯正用アンカースクリューを使用すると、前歯を根っこ側に圧下できるため外科手術をせずにガミースマイルの見た目の改善ができます。
見た目の改善・患者の負担軽減
固定したい歯がある場合には、ヘッドギアという被る装置を装着する必要がありました。ヘッドギアは寝ている時に使用するのが一般的で、長時間装着しないと効果が期待できません。またヘッドギアは頭への固定が必要で、見た目が悪い点を嫌がる方も少なくありません。いっぽう、歯科矯正用アンカースクリューは顎の骨に固定するため、患者自身で管理する必要がありません。見た目が悪くなる心配もほとんどなく、矯正治療を進めることができます。
歯科矯正用アンカースクリューの3つのデメリット
歯科矯正用アンカースクリューは多くのメリットがあるいっぽうで、次のようなデメリットが起こるケースもあります。
● 脱落することがある
● 全身疾患がある場合はできない可能性もある
● 炎症や痛み
それぞれのデメリットについて詳しく紹介します。
脱落することがある
歯科矯正用アンカースクリューは顎の骨に固定しますが、打つ場所によってはうまく固定せずに外れることがあります。脱落した場合には再度アンカースクリューを打つ必要がありますが、事前に骨の厚みや量などを確認してから打つ位置を決めるため、自然と脱落するリスクはほとんどありません。またアンカースクリューの清掃状態が悪いと、細菌感染を引き起こしグラグラと動いて外れることもあります。歯だけでなくアンカースクリューもしっかりとケアすることで、細菌感染するリスクは軽減できます。
全身疾患がある場合はできない可能性もある
歯科矯正用アンカースクリューは顎の骨の中に打つ処置が必要になるため、次のようなケースでは治療できない可能性があります。
● 重度の全心疾患がある
● 出血性の病気(血が止まらないなど)
● 口内が異常に乾燥している状態(口腔内乾燥症)
● BP製剤(ビスホスホネート)の服用など
ただし、自身で数値や症状をコントロールできている方の場合は歯科矯正用アンカースクリューができる可能性があります。
炎症や痛み
歯科矯正用アンカースクリューを打った歯茎に炎症が起きると、痛みを感じやすいです。アンカースクリューの周辺を清潔に保つことで、少しずつ炎症が治ると同時に痛みも無くなる傾向です。また、術後の麻酔が切れたタイミングで痛みを感じるケースも少なくありません。痛みに弱い方は、麻酔が切れる前に痛み止めを飲んでおくと安心です。
歯科矯正用アンカースクリューの治療期間・費用の相場について
歯科矯正用アンカースクリューの使用期間は歯並びの状態や治療計画によって変わりますが、打ってから半年〜1年ほどが一般的です。アンカースクリューが必要無くなった時点で除去を行いますが、麻酔をせずに除去を行うケースがほとんどで数分の処置で終了します。傷口は1週間ほどで治ることが多く、傷跡が残る心配はありません。また、歯科矯正用アンカースクリューの1本の費用は20,000円〜40,000円が相場です。アンカースクリューはオプションとして設定している歯科医院が多く、矯正治療にプラスした費用が必要になります。
歯科矯正用アンカースクリューについてのよくある質問
ここでは、歯科矯正用アンカースクリューのよくある質問について紹介していきます。
Qネジを打つ処置は痛いですか?
A麻酔を使うため、処置中に痛みを感じることはほとんどありません。
Qマウスピース型矯正でもアンカースクリューは使えますか?
Aマウスピース型矯正でも、歯科矯正用アンカースクリューを使うことはあります。マウスピース型矯正で治療できる適応症例が多くなります。
Qアンカースクリューを打った当日は歯磨きしても大丈夫ですか?
A処置をした当日はアンカースクリューに歯ブラシは当てず、うがいで清潔に保つようにしましょう。その後は柔らかい歯ブラシで、歯磨きするのがおすすめです。
Qヘビースモーカーでもアンカースクリューはできますか?
A喫煙している場合にはアンカースクリューが安定せず脱落する恐れがあります。そのため、一時的な断煙または矯正治療を始める前の禁煙をおすすめしています。
まとめ
歯科矯正用アンカースクリューは歯並びの状態や歯を動かしたい方向によって、打つ位置や付ける期間が変わります。またアンカースクリューを使用することで、治療期間の短縮や非抜歯での矯正治療など、さまざまなメリットがあります。興味のある方は、自身の歯並びでアンカースクリューが可能なのかを担当医に相談しましょう。なお、当院でも歯科矯正用アンカースクリューを取り入れていますので、興味のある方はお気軽にご相談ください。【カウンセリング予約はこちらから★】