睡眠時間をしっかりとっているのに、いつも日中に集中できず、眠くなってしまう…これは、睡眠時無呼吸症候群の症状でもあります。
睡眠時無呼吸症候群の原因の多くは肥満ですが、実は不正咬合である受け口(下顎前突・反対咬合)も、原因の一つです。
本記事では、睡眠時無呼吸症候群と受け口の関連性について、詳しく解説していきます。
目次
なぜ受け口が関係しているの?
受け口は、下の歯が上の歯よりも前に出て、噛み合わせがずれている歯並びです。程度にもよりますが、下顎が前に突出していることからシャクレとも呼ばれます。
受け口は、正常な噛み合わせと比べて口呼吸の割合が高く、舌が後方に垂れ下がっています。
舌が低いこの状態は「低位舌」と呼ばれ、これにより空気の通り道である気道が狭まってしまうのです。気道が狭まる原因は、主に肥満や加齢による筋力の低下、遺伝的な形態異常ですが、受け口によって舌の位置に問題が生じていることでも起こり得ます。つまり、受け口の場合は口呼吸によって舌が下がり気道が狭くなることで、睡眠時に呼吸が止まるってしまうことがあるのです。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)何か?
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)は、睡眠中一時的に呼吸が停止する病気です。この状態は、気道の閉塞や中枢神経系の問題によって引き起こされることがあります。
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠の質を低下させ、日中の眠気や集中力の低下、疲労感など多くの問題を誘発する病気です。重症の場合、全身疾患などの重大な健康問題につながることもあります。
睡眠時無呼吸症候群を放置しておくと
では、睡眠時無呼吸症候群のリスクにはどのようなものがあるのでしょうか。以下に、主なリスクを詳しく解説します。
低酸素血症
睡眠時無呼吸症候群では、呼吸が度々一時的に停止するため、通常よりも全身への酸素供給量が減少します。これにより、血液中の酸素濃度が低下し、低酸素血症が発生することがあります。低酸素血症は心臓に大きな負担をかける、非常に危険な症状です。
高血圧
睡眠時無呼吸症候群は、高血圧のリスクを増加させることもあります。睡眠時無呼吸症候群の方は、無呼吸の状態が間接的に継続するため、呼吸を再開させようと交感神経が優位な状態が続きます。通常、リラックス時に優位になるはずの副交感神経よりも、交感神経が優位になってしまうことで血圧が上昇してしまうのです。高血圧は、心疾患や脳卒中などの重篤な合併症を引き起こすリスクもあります。
虚血性心疾患
虚血性心疾患は、心筋(心臓の筋肉)に血液を送っている重要な血管である「冠動脈」が、詰まったり狭まったりすることで、心筋に必要な血液が不十分な状態になってしまう疾患です。狭心症や心筋梗塞も、虚血性心疾患の主な疾患になります。
睡眠時無呼吸症候群は、動脈硬化を誘発、進行させ、冠動脈に悪影響を及ぼしてこれらの心疾患リスクを高めることがわかっています。
不整脈
不整脈は、その名の通り脈が不規則になる状態をいい、脈拍が速くなる頻脈や、逆に遅くなる徐脈も不整脈に含まれます。また、心房の収縮が不十分で、細かく震えるように動く心房細動も、不整脈のうちの一つです。
不整脈は、動悸や疲労感、息切れなど、日常生活に支障をきたす症状に加え、血栓が形成されるリスクが高いため、脳梗塞にも繋がりやすいとされています。睡眠時無呼吸症候群は、この不整脈とも深い関連性があるのです。
糖尿病
睡眠時無呼吸症候群は、2型糖尿病の発症リスクを増加させる要因の一つとされています。睡眠時、無呼吸状態が頻発することで交感神経が有利になり、インスリンの抵抗性を低下させることで、糖尿病のリスクを高めてしまうのです。
日中の眠気
睡眠時無呼吸症候群は、夜間の睡眠の質を低下させることで有名です。そのため、度々日中に疲れやすく、眠気や集中力の低下を引き起こします。これらは仕事や勉強に集中できないばかりか、居眠り運転による交通事故の危険性を増加させる要因となります。
心理的な悪影響
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠の質が低下し、十分な睡眠時間が確保できません。また、交感神経が優位になりやすいことから、夜間に目覚めてしまうことがあり、うつ病や不安症状のリスクを高める可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群は、健康状態に深刻な影響を及ぼす可能性が高いため、睡眠中に度々呼吸が止まっている場合、専門家の診断と治療を受けることが非常に重要です。
受け口を治せば睡眠時無呼吸症候群は改善する?
受け口が睡眠時無呼吸症候群と関連している主要な理由は、受け口に多く見られる低位舌が、気道の閉塞を引き起こす可能性があるためです。
しかし、ただ受け口を治すだけでは、睡眠時無呼吸症候群が改善するとは言い切れません。なぜかというと、低位舌は歯並びと噛み合わせを治すことに加え、舌を正しい位置に置けるようトレーニングをしなければならないためです。このトレーニングは「口腔筋機能療法(MFT)」と呼ばれ、矯正治療と合わせて実施されます。
低位舌は常に舌の力が抜けて下がっている状態であるため、正常な舌と比べると筋力が著しく低下しています。そのため、口腔筋機能療法によるトレーニングで舌の筋力を鍛え、正しい位置におけるようにしなければいけません。筋力がつき、舌の位置を覚えると段々と無意識下でも低位舌になりにくくなり、睡眠中にも低位舌による気道の閉鎖が起こりにくくなります。つまり、受け口を治すとともに舌のトレーニングをすることで、睡眠時無呼吸症候群が改善する可能性が高いということです。
ただし、肥満や骨格など、その他の要因が重なって睡眠時無呼吸症候群を引き起こしている場合には、受け口を治す以外にも別途治療が必要になります。原因によっても最適なアプローチは異なりますので、まずは専門家へ相談しましょう。
受け口を治すには
不正咬合の一つである受け口は、自力で治すことはできません。治療するには、矯正治療が必要です。
矯正治療では主に、ブラケットとワイヤーを使用する「表側矯正・裏側矯正・ハーフリンガル矯正」と、透明なプラスチック製のアライナーを使用する「マウスピース矯正」を用いて受け口の噛み合わせや歯並びを改善していきます。場合によっては抜歯をして治療する場合もありますが、無理に非抜歯で治療すると、口元全体が突出した「口ゴボ」になることも多いため、担当医のアドバイスを聞きながら治療を進めていきましょう。
また、噛み合わせを構成する骨格に自体に問題がある場合、下顎の形や位置を修正する外科手術を併用し、受け口を治療する必要があります。このような顎変形症によって受け口が発生し、外科手術を伴う矯正治療が必要であると診断された場合、指定の医療機関にて保険適用で矯正治療を行うことが可能です。装置は表側のワイヤー矯正のみに限定されますが、自費で歯列矯正と外科手術を受けるよりも、治療費の負担が大きく軽減されます。
まとめ
今回お話した通り、睡眠時無呼吸症候群は、受け口によくみられる低位舌によって生じることがあります。睡眠時無呼吸症候群は、高血圧や心筋梗塞などの重大な疾患を誘発するリスクが高くなるため、適切な治療が必要です。
また、受け口による低位舌で睡眠時無呼吸症候群が起こっている場合には、正しい噛み合わせと歯並び、そして舌のトレーニングによって、改善できることがあります。
受け口による低位舌や、睡眠時の呼吸停止にお悩みの方は、全身の健康のためにも矯正医へ相談してみましょう。
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